クラフトマンシップ

百年包丁「和 NAGOMI」
この包丁が誕生するまでに、
実に百年を超える時間が必要でした。
百年を超える経験が必要でした。
そして先人の知恵と技と、
思いのすべてを受け継ぎ、
「和 NAGOMI」が誕生しました。
その一本一本に、私たちの
クラフトマンシップが注がれています。
私たちが目指したのは
百年先も切れ味と使いやすさの変わらない
「百年包丁」です。

長良川をはじめとした清流をほこる水系、山あいに広がる豊かな自然と良質な焼刃土。その里山で作られる豊富な松炭。刃物づくりに恵まれた環境の岐阜県関市は、鎌倉時代より多くの刀工が集まる刃物の名産地でした。刃物の街として発展してきたこの街は、大小さまざまな工場はもちろん、伝統と技術に裏付けられ多くの優秀な職人を育んで来ました。そしてこの街は長い時間をかけ、刃物づくりを工程ごとに専門の会社が分業して行う、あたかも街全体が大きな一つの工房へと変貌を遂げていったのです。
世界に冠たる奇跡の刃物の街・関。この地で140余年の歴史を持つ刃物メーカー三星刃物。そこで培われた技術と品質で国内はもちろん、欧米向けの製品の開発・販売にも取り組んでまいりました。その長きにわたる伝統と技術の集大成として、そして、何よりも自分達自身が本当に納得できる、初めての自社ブランドを作ることを決意しました。切れ味の鋭い硬度の高い刃物は、その一方で刃こぼれしやすく、手入れが難しい。プロの包丁人が求める切れ味でありながら、家庭でも長くお使いいただける手入れのしやすい包丁。切れ味と扱いやすさの両立は、包丁に課せられた永遠の課題です。

その課題に対するひとつの答えが
「和 NAGOMI」なのです。

刀鍛冶の曾祖父から数えて5代目となる渡邉隆久社長。生粋の刃物のプロとしてのDNAを受け継ぐだけでなく、青年期には商社に身をおき海外勤務を経験するなど、グローバルな視点も併せ持ちます。一方、妻の友佳理さんは、料理をこよなく愛し、自らパン教室を主催するいわば刃物づくりとは縁のない女性。…しかし、自社ブランド開発のきっかけは、この友佳理さんのパン教室に集う生徒さんからの声でした。
「美味しい料理を作るには、家庭でも切れ味の優れた良い包丁が必要」「家庭で使う包丁だから、手入れが簡単で切れ味が長く続いてほしい」「料理を作るときに手に馴染み、扱いやすい包丁があったら」生徒から寄せられる生の声は、どんな市場調査よりも新ブランド開発のためのヒントに溢れていました。

こうして、渡邉夫妻の二人三脚での新しい挑戦が始まりました。

まず、渡邉が目をつけたのは440Aモリブデン鋼。この鋼材は、近年、切れ味を重視する流行の硬度の高い鋼材とは異なり、錆に強いだけでなく、粘りのある特性を持ちます。この鋼材を一枚刃として砥ぎ出し、巧みな焼き入れと刃付けを行うことで、鋭い切れ味でありながら、しなやかな刃身を作り上げることに成功しました。
刃付けの角度や研ぎ方は現場の職人と渡邉が立場を超え意見をぶつけあい、気の遠くなるような試行錯誤の果て、納得の切れ味を作り出すことができました。結果、通常の倍となる工程が必要となりました。これを20年以上の経験を持つ熟練の職人がその一本一本を丹念に手作業で行っています。仕上げは目視だけでなく、精密な測定器と顕微鏡を用い刃先の検証を行い、そこに妥協は一切ありません。一番の悩みは量産の利かないところです。

持った瞬間に手に馴染むハンドルにも、多くのこだわりがあります。緩やかな丸みを帯びた形状のこのハンドルは、すべて三星刃物自社工場で職人の手作業で仕上げられています。刃身とハンドル、それをつなぐリベットは磨かれ、初めからそうであったかのように、凹凸がまったくありません。木部のハンドルと金属のリベット。硬さのまったく異なる材質を研磨し、この状態に仕上げるのは、未だに人間の手で行う以外不可能です。細心の注意と、熟練の技がこの見事なハンドルを作り上げました。
そしてお気づきでしょうか。このハンドルには塗装が施されていないことを。耐水性の高いスペイン製の強化合板を使用することで、防水のための塗装が不要となり、木目の美しい仕上がりとなりました。木のぬくもりを感じる自然な握り心地と、数ミリ、数グラム単位で試行錯誤を重ねた刃身との重量バランスで、初めて手にした瞬間から何年も使い込んだように手に馴染むこの一本は、その切れ味とも相まって、料理をますます楽しいものにしてくれるに違いありません。

良い包丁は料理の素材の美味しさを一層引き出してくれます。鋭利な刃は食物繊維を痛めることなく食材を切ることで風味を最大限に引き出すことができます。また、美しい断面は細胞壁の破損も少なく、食材の栄養価を損なうことを軽減します。見た目だけでなく、良い包丁は、料理の本当の美味しさを引き出してくれます。
しかし、どんなに鋭い切れ味の包丁でも、研がなければその切れ味もいつかは落ちてしまいます。「和 NAGOMI」を新聞紙で研いでみてください。月に1、2度、数回研ぐだけで気持ちの良い切れ味が戻ります。無類のお手入れの簡単さが、この包丁の自慢です。それでも、ご自宅でのお手入れでは切れ味が戻らなくなった場合は、弊社までお送りください。弊社の職人がお買い求めいただいたときの切れ味に、お研ぎ直しをさせていただきます。

本当に良いものとは、
一生、ずっとつき合えるものである。
それが私たちの包丁づくりの信念です。
そして、同様にお客様とのお付き合いも
ずっと続いてまいります。

作り手のこだわりと使い手のニーズを込めて。
幅広いラインナップを取り揃えています。